2019年度 TOEIC® Program 総受験者数は約241万人

IIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)は5月26日、プレスリリースにて2019年度のTOEIC® Program 総受験者数が約241万人であったことを発表した。

TOEIC® Programの中で最も受験者数が多いTOEIC® L&Rだけに絞って見てみると、2019年度の総受験者は約220万人で、2018年度と比べて約25万人の減少と言える。ただし、2019年度の総受験者数には新型コロナウィルスの影響で中止となった2019年3月の公開テストを受験予定だった約19万人が含まれていない。この数字を含めて考えると、2019年度のTOEIC® L&R総受験者は約240万人で、2018年度と比べて5万人ほどの減少となる。

ここから私の分析を加える。IIBCのホームページで公表されている以下の「受験者数の推移」のグラフを見てほしい。ピークは2015年だが、これはTOEIC® L&Rテストが新形式(現行形式)に改訂される前の年である。つまり、新形式に移行した年から受験者数は減り始めていると言える。2015年は形式変更前の駆け込み需要で受験者数が伸びたのは確かだと思うが、その後の減少傾向は2006年の改訂時には見られなかった現象だけに気がかりである。コロナの影響がある2019年はとりあえず無視して2015年~2018年の推移に着目すると、この減少についてある事実が浮かび上がってくる。
    
                   ※IIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)HPより

このグラフのままだとわかりにくいので、公開テストとIPテストの系列を入れ替えてみる。下の濃い青色が公開テスト受験者数で、上に乗っている薄い青色がIPテスト受験者数である。見ておわかりの通り、公開テスト受験者数は2015年以降横ばいであまり変わっていないが、IPテスト受験者数は明らかに減っているのだ。IPテストは、学校・企業で随時実施される団体受験制度なので、2016年以降IPテスト実施する学校・企業が減っているか、もしくは学校・企業で実施するIPテストの回数が減っているか、あるいはその両方と考えられる。
   

学校・企業でのIPテスト受験者が減少している理由は私にはわからない。ただ、日本の少子化という流れを考えれば今後IPテストのみならず、公開テストの受験者も減少に転じるのは時間の問題だろう。以下は、日本の人口推移と今後の予測を表すグラフである。2015年時点で既に日本の総人口は減少に転じている。TOEIC® L&Rテストのメインの受験層である15~64歳の生産年齢人口に着目すると、2015年から2018年のわずか3年で200万人ほど減少しているように見える。学校や企業でのIPテストの受験者数や受験回数が実際に減っているのだとしたら、その最大の理由はここにあるのかもしれない。
   
                            ※厚生労働省ホームページより

IIBCも当然この分析は済ませているものと思われる。TOEIC® L&Rの受験者数の減少が日本が抱える大きな社会問題による必然の結果と結論付けられるかどうかは別として、直近の受験者数の減少はIPテスト受験者数の減少であり、IIBCがそれに対して何らかの策を打たなければならないことははっきりしている。そこに重なるのが、2020年3月10日にプレスリリースにて発表されたTOEIC® Program(TOEIC® L&R、TOEIC® S&W、TOEIC BridgeⓇ L&R、TOEIC BridgeⓇ S&W)の団体受験特別制度(IPテスト)におけるオンライン受験方式の追加というニュースだ。

オンライン受験方式はCAT※ベースなので、TOEIC® L&Rであればテスト時間は1時間で済む。しかも信頼性はそのまま、今まで通り10点~990点のスコアが出てくるのであれば、学校や企業にとっては非常にありがたい仕組みだと言える。なぜなら、受験する生徒や社員の拘束時間が半分になるだけでなく、試験官として受験をサポートする教員や企業の研修担当者の拘束時間も半分になるからだ。また、このオンラインIPテストは自宅でも受験できるので、3密(密閉、密集、密接)を極力避ける必要があるこのタイミングには非常にマッチしている受験方式と言える。

※CAT(Computer Adaptive Test)・・・受験者の能力に合わせて出題するテスト問題を変化させていく、適応型のテストシステム。

少なくとも新型コロナウィルスの特効薬ができるまでは3密イベントの自粛要請が繰り返されることが想定される中、果たしてこのオンライン受験方式がIPテスト受験者減の特効薬となるのか、今後に注目したい。

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