TOEIC L&R テスト不正受験 問われる試験の公平性と受験者のモラル
IIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)は6月5日、5月のTOEIC L&R 公開テストにおいて受験者による不正行為が発覚したことを受け、お知らせにて今後のTOEIC L&R公開テストの実施運営に関する不正対策強化の方針を発表しました。
ポイントは以下の3つです。
1.受験者に対して禁止行為を周知徹底する
2.悪質な不正行為を発見した場合は警察に通報する
3.再発防止策を引き続き検討する
1.受験者に対して禁止行為を周知徹底する
IIBCはこれまでも受験要領や「受験のしおり」(現在は配布されていない)の中で禁止行為(prohibited acts)について受験者に注意喚起(reminder)を行ってきましたが、今回の事件を受けて2025年6月以降の公開テストから、試験会場で①「受験要領記載の禁止行為をポスターにて掲示する」、②「試験官から受験者に対して注意喚起のアナウンスをする」などの対応を行うことで、受験者に対して禁止行為の周知徹底を図る(try hard to keep everyone informed)ようです。
この対応には一定の効果はあると思いますが、「注意喚起」を強化するだけでは今回のような不正行為を根絶する(uproot/eradicate)ことは難しいでしょう。そもそも「替え玉受験(phony test-taking)」や「カンニング(cheating)」を行う人は、不正行為であることは百も承知(well aware)で行うのであって、「報酬のためなら何でもやる」「スコアは金で買える」「日本での不正などチョロい」と考えているモラルの低い輩にいくら注意喚起したところで、馬の耳に念仏(preaching to deaf ears)です。下種の極み(the lowest of the low)は「ポスターに気付きませんでした」とか、「私は日本語がよくわからないから何がアナウンスされているのか理解できませんでした」などど平気で言ってきます。モラルの高い大半の受験者にとっては、当たり前のことをわざわざ試験日当日に念押しされるだけです。
2.悪質な不正行為を発見した場合は警察に通報する
受験要領(2025年6月5日時点)によると、「注意事項」に違反する行為に対してIIBCがとる可能性がある対応(measures)は以下の6つです。
①試験官による注意・警告(Warning from staff)
②試験途中での退場(Dismissal from the test site during the test)
③手荷物の確認(Checks of belongings)
④テストの採点拒否(Your answers not being scored)
⑤受験資格の剥奪(Disqualification from taking any test)
⑥スコアの無効化(Cancellation of test scores administered)
今回の発表により、ここに新たに「警察への通報(call to the police)」が加わるものと考えられます。偽計業務妨害(fraudulent obstruction of business)は刑法(criminal law)で定められた犯罪行為ですので、今回の一件でIIBCは悪質な不正行為に対してより厳正な措置(more stringent measures)をとる旨を明記することに決めたようです。これがどれだけ抑止効果(deterrent effects)をもたらすか。
結局、いくら事前に注意喚起をしても対応を厳格化しても、IIBCが不正行為を見抜けなければ意味がありません。
3.再発防止策を引き続き検討する
お知らせの最後で、IIBCは「受験者の皆様に安心して試験を受けていただけますよう、引き続き再発防止策の検討を進めてまいります」と述べています。
あらためて今回の事件を振り返ると、今回の事件は容疑者(suspect/the accused)が他人名義の学生証で受験しようとしていたことから、IIBCが禁止する「受験者以外の者が受験者本人になりすまして試験を受ける行為(Taking the test in place of a registered test taker)」の禁止事項に抵触し、偽計業務妨害の疑いで逮捕されました。さらに、同容疑者が付けていたマスクの中に小型マイクが仕込まれていたこと、および6月5日の報道記事で容疑者が受験の申し込みに使用した住所と同じ住所で43人もの人が受験を申し込んでいたという事実が判明したことから、「替え玉受験」だけでなく「集団カンニング(group cheating)」の未遂(fialed attempt)もほぼ間違いありません。
また同報道から、同容疑者による「替え玉受験」は過去にも繰り返し行われていた可能性が高いと言えます。それが事実だとしたら(if that is the case)、同容疑者はこれまで何度も受験会場での本人確認(verification of one’s identity)をすり抜けていたことになります。また、同じタイミングで「集団カンニング」も行われていたとしたら更に大問題です。なぜなら、TOEIC L&Rテストがうたう試験の「公平性(fairness)」が担保されていなかった(not guaranteed)ことになるからです。
今後、「禁止行為の周知徹底」「不正行為への対応の厳格化」に加えて、「本人確認の強化」や「小型マイク、録画・録音用の機器(devices)のチェック」などの課題に、IIBCがどこまで取り組めるのか注目です。
日本でのカンニングを斡旋する中国のカンニング業者への取材記事によると(accroding to the article)、TOEICの「カンニングプラン」の値段は40万円で、「替え玉受験プラン」の値段は80万円なのだとか。仮に、今回の事件の背後にいるのがこのカンニング業者だとしたら、「替え玉受験プラン」に1人、「カンニングプラン」に43人が申し込んだ(sign up for/apply for/register for)ことになり、不正行為がバレなければ業者はたった1回のTOEICで18,000,000円を荒稼ぎしていた(would have raked in)計算なります。
TOEICが犯罪の温床(hotbed of crime)になる日が来るなど、誰が想像したでしょうか。今回の43人の中に日本人はいないと信じたいですが、これまでに大学入試等で何度も不正受験のニュースを見聞きしてきたことを考えると、不正をはたらく日本人はいないなどとは到底言えたものではありません。不正は人間のさもしさ(meanness/baseness)の表れです。国籍を問わず (regardless of nationality)、全ての受験者のモラルが問われています。
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